解説
稲の病害虫を松明(たいまつ)の火で追い払い豊作を祈る伝統行事で、毎年6月中旬から下旬にかけて能登の集落で行われます。珠洲市無形民俗文化財に指定される同市若山町経念地区の「虫送り」では、住民が地元の神社に参拝後、竹を束ねた長さ2~3mの大松明を掲げ、太鼓を打ち鳴らしながら、「ウンカ虫出ていけ」と農道やあぜ道を歩きます。農業用水の引き込み口に「虫札」を立て、神職が祝詞(のりと)をあげて害虫駆除と豊作を祈願します。ウンカは梅雨前線に沿って発達する気流に乗って中国大陸から飛来し、稲の生育遅れや坪枯(つぼが)れ、ウイルス病などを引き起こす大敵で、江戸時代に起きた飢饉(ききん)の原因のひとつと言われます。農薬がなかった時代、松明でウンカを呼び寄せて焼いて防除したのが、虫送りの始まりです。