解説
久麻加夫都阿良加志比古(くまかぶとあらかしひこ)神社の秋季例祭で、毎年9月20日に行われる「熊甲二十日祭(くまかぶとはつかまつり)の枠旗(わくばた)行事」の通称が、お熊甲祭です。末社19社が集まって行う「寄り合い祭り」の形式をもち、19社が高さ20mの深紅の枠旗と神輿(みこし)の行列を整え、天狗の面をつけた猿田彦(さるたひこ)を先頭に、「イヤサカサー」の掛け声とともに次々と本社へ向かいます。本社に入ると、神輿と枠旗は拝殿にぶつかるように参道を3度往復し、所定の位置につきます。奉幣(ほうへい)式を行った後、本社と末社の20人の猿田彦が鉦(かね)や太鼓に合わせて乱舞する姿は、豊作と豊漁の喜びを表したものと言われます。この後、約700m離れた加茂原(かもわら)に向かい、枠旗を地面すれすれまで傾ける妙技「島田くずし」も見せ場のひとつです。祭神の久麻加夫都阿良加志比古神は3~4世紀、朝鮮南部の阿羅(あら)国の王族と言われ、もうひとつの都奴加阿良斯止(つぬがあらしとの)神は4~6世紀、福井の敦賀に渡来した朝鮮南部の任那(みまな)国の王子であると「日本書記」に記されています。祭りを盛り上げる鉦や太鼓のリズムも独特で、朝鮮半島の影響を色濃く受けていると指摘する識者もおり、能登が培ってきた文化の多様性を示す貴重な祭りと言えます。お熊甲祭奉賛会が国の重要無形民俗文化財の指定を受けています。