解説
かつて木炭生産が盛んだった能登地方では、炭焼き窯から出る灰やわらなどの草木灰を海水で洗った生ワカメにまぶし、海岸で天日干しする「灰干しわかめ」がよく作られてきました。灰干しは江戸時代に考えられた技術であり、色や歯ごたえの良さ、磯(いそ)の香りを常温で1年以上保つことができます。長期間保存できる理由としては、灰のアルカリ成分が酵素の働きを抑えることが挙げられ、その効果によって鮮やかな緑色が持続します。また、灰がワカメ表面の水分を吸収し素早く乾燥することで、品質の低下を防止します。灰に豊富に含まれるカルシウム分は軟化を防ぐのに役立ち、ワカメ本来の歯ごたえを残すこともできます。能登では、ベニモズク科の海藻「海ぞうめん」でも同様に灰干しを施すことが多く、これらの加工品は能登の特産となっています。