解説
輪島市東部の山あいにある西山町大西山地区は、緩やかな斜面に沿って20軒あまりの民家と田畑が点在し、牧歌的な農村風景を見ることができます。約30年前から集落全体でスイセンが植栽され、毎年4月中旬になると数万株の花が咲き誇る「スイセンの里」としても知られています。同地区では、農作業の時に歌った「かいのごかち唄」などの農作業歌13曲が大西山民謡保存会によって伝承され、輪島市の無形民俗文化財に指定されています。中でも、田植えの際の式唄は、富山県の五箇山(ごかやま)で歌い継がれている麦屋節(むぎやぶし)の原形とされています。また、同地区は奥能登に伝わる「猿鬼(さるおに)伝説」ゆかりの地でもあり、その昔、大西山に悪事を働く猿鬼がおり、手を焼いた住民たちが一致団結して猿鬼を追い払い、鬼は柳田村(現能登町)当目(とうめ)に落ちのびたと伝わります。伝説を裏付けるように、猿鬼の足跡と言われる岩場が続く「釜淵(かまぶち)」、猿鬼が住んだとされる「隠れ岩」などが今も残ります。