解説
春の田植えを前に、田んぼの区画側面を塗り直す「畦塗り」が行われます。この際に、能登では畦に大豆を植える習慣がありました。これは狭い農地を有効活用するための知恵のひとつで、畦で育てた豆は「畦豆」と言われています。能登ではかつて各家で味噌を仕込むのが一般的で、その原料として畔豆がよく使われました。また、大豆をたたいて潰し、乾燥させた「打ち豆」が保存食として作られ、冬場の貴重なタンパク源となりました。小松市出身の俳人・飴山實(あめやまみのる)は、そんな能登の情景を「奥能登や打てばとびちる新大豆」と詠んでいます。農業の機械化が進むにつれて、畦豆はその作業のじゃまになり、近年ではあまり見られなくなりましたが、能登町柳田地区などでは今もこの伝統を受け継いでいます。