解説
能登では、地元住民によるさまざまな里山保全活動が行われています。
珠洲市では、NPO法人「能登半島おらっちゃの里山里海」が中心となって保全活動に取り組んでいます。同法人は、同市三崎町小泊に平成18(2006)年に設立された「金沢大学 能登半島里山里海自然学校」の活動を支援していくことを目的に発足した「珠洲サポート会」が前身となり、平成20(2008)年にNPO法人となりました。これまでに自然学校周辺の保全林の管理作業をはじめ、荒廃した水田のビオトープの復元やゲンゴロウ類などの保護など、多彩な活動を展開しています。また、里山の環境を維持する取り組みとして、木を適度に伐採し薪(まき)として活用する資源化の取り組みが、平成20年度環境省循環型地域支援事業に採択されています。さらに、保全林などをフィールドに、子どもを対象にした環境学習も定期的に実施しています。
「まるやま組」は輪島市三井町市ノ坂地区を主な活動フィールドとして開催される「土地に根ざした学びの場」をコンセプトに活動する団体です。平成22(2010)年より食や農、自然、経済、学び、景観、文化など様々な角度から、老若男女、農家、生態学研究者、料理人、染色家、主婦、民俗学者、神主、役所勤務の人、大学生など多様なバックグラウンドをもつ人々が集まり活動しています。教える側、習う側が固定した一方向の学びではなく、各人のスキルや感性を活かし、多面的に意見交換する中で、様々なレベルの学びが生まれる開かれた場を目指しています。主な活動内容は、月例のまるやま周辺の植物相モニタリング調査(環境省のモニタリングサイト1000里地調査)と観察会、季節の山菜や地元食材を使って皆で食事を作り食べる「オープンキッチン」、そして田んぼの畔や耕作放棄地を活用した豆で醤油作りなどです。また、季節ごとの参加型ワークショップとして、ホタルの観察会や農耕儀礼アエノコトなどを行っています。まるやま組のアエノコトは「生物多様性アクション大賞2014」(主催:国連生物多様性の10年日本委員会)で大賞に選ばれました。
能登町宮地・鮭尾地区では、平成8(1996)年に住民ら7人が「春蘭の里実行委員会」を立ち上げ、地区内にハウスを設けてシュンランの栽培を始めました。シュンランは日の差し込む雑木林や松林など春の里山に咲く野生のランの一種です。株の一部を里山保全のため山に返す一方、シュンランの鉢や地元の特産品を愛好者に送る会員制度もスタートし、現在も続いています。
穴水町では、トキが再び穴水町の上空を羽ばたくような自然を守ろうと、平成21(2009)年、地元住民らで新崎・志ヶ浦地区里海里山推進協議会を発足しました。里山での下草刈りや海岸での清掃活動、ボラ待ち櫓(やぐら)の復元などに取り組んでいます。また、同地区の沖合は多くの釣り客でにぎわう「クロダイの里」として知られます。水産資源を保護するため、毎年クロダイの稚魚を放流しており、平成26(2014)年には約2万匹を海に放しました。