解説
清水町の仁江(にえ)海岸などに面して作られた塩田では、日本唯一の伝統的な製塩法「揚げ浜式製塩」が受け継がれています。揚げ浜式製塩は、砂を敷いた塩田に汲み上げた海水をまき、天日で乾かした後にかき集め、再び海水を注いで塩分濃度の高いかん水を作り、それを平釜で夜を徹してたき上げて完成します。海のミネラルを豊富に含んだ海塩は、ほのかに甘みのあるまろやかさが特徴です。揚げ浜式製塩は、慶長元(1596)年に仁江地内で行われていた記録が残り、藩政期になると加賀藩の重要産業として手厚い保護を受けました。明治期以降、安価な瀬戸内産の塩が広く流通した影響で衰退し、一時は清水町の1軒だけで伝承されていましたが、近年は製塩業者が増え、知名度が高まっています。平成20(2008)年、国指定重要無形民俗文化財となり、製塩の労働歌として伝わる砂取節(すなとりぶし)は県無形民俗文化財に指定されています。