解説
9月11日に蛸島町の高倉彦(たかくらひこ)神社で開かれる祭礼の際、境内の神楽殿で演じられる神事芸能が早船狂言です。舞台に長さ4.5メートルの漆塗りの早船「人力丸」を置き、その上に船頭、カコ(水夫)などの木偶(でく)人形を飾り、披露します。狂言ではまず、裃(かみしも)姿の口上人が早船由来口上書を述べ、その後、出歌(でうた)とともに蛇の目傘をさした船頭が登場。呼び出された艫取(ともとり)が、芸者にいれあげ、一向に出港しようとしない船頭を、説得して船出させる話で、両者の軽妙な掛け合いが見どころです。出演者は新成人から選び、地元の「蛸島早船狂言保存会」が指導しています。起源ははっきりしていませんが、200年以上前に始まったとされ、近世に流行した歌舞伎狂言や浄瑠璃の影響を強く受けていると考えられています。平成8(1996)年に県の指定無形民俗文化財に指定されました。