解説
沈金や蒔絵(まきえ)を施した輪島塗は、日本を代表する漆器として知られます。輪島塗の大きな特徴は入念な下塗りにあります。木地は古くからケヤキやアテが使われ、木地の破損しやすい個所に麻布を漆で張って強化することや、下地に輪島で産出する地の粉(ケイ藻土の一種)を漆と練り合わせたものを数回塗ります。この本堅地(ほんかたじ)塗法が堅牢(けんろう)さにつながり、繊細な加飾の優美さとあいまって輪島塗を有名にしてきました。これらの伝統技法を受け継ぐ「輪島塗技術保存会」は国の重要無形文化財に指定されています。輪島塗の起源は古く、室町時代、紀州の根来寺(ねごろじ)の僧によって塗りの技術が伝えられと言われ、享保年間(1716~1736)に沈金の技法が生まれ、江戸時代末期から明治にかけて金沢と京都などから蒔絵の技法が導入され、あらゆる漆芸技法が輪島で継承されてきました。